認知機能、アロマで刺激 脳の病気リスク減らす試み・日経新聞

日本経済新聞に「認知機能、アロマで刺激 脳の病気リスク減らす試み 」という記事が掲載されました。

~2016.6.30夕刊~
  
 認知症やパーキンソン病といった脳の病気と、匂いの感覚である嗅覚の関係が注目されています。
香りによって認知機能を刺激したり、40~50代から特定のアロマオイルを使ったりすることで病気のリスクを減らす試みが始まっています。
認知機能が衰えるリスクのある人たちに嗅覚訓練をして効果を確認する研究も動き出すなど。
 
●ローズマリーやレモン、ラベンダーやオレンジは、認知症予防や改善に有効なことがわかっており、FBでも以前取り上げたことがあります。
「アルツハイマー型認知症の症状が表れるのは65歳以上ですが、原因たんぱく質のアミロイドβが脳にたまり始めるのはその20~30年前から。40代からアロマオイルを使うことを勧めている」と日本認知症予防学会理事長を務める浦上克哉鳥取大学医学部教授は説明してます。
 
●アルツハイマー型認知症の早期診断に香りを利用し判断する研究もされています。
 
●認知症と並ぶ代表的な脳の病気であるパーキンソン病も匂いが分からなくなる病気といわれ、「手足が震える」「筋肉がこわばる」といった4つの主要な運動症状が出現する数年前から、嗅覚障害が表れるケースが多い。
 
●また、パーキンソン病の患者は症状が進んだ後に、認知症を発症するリスクが高いことも知られているため、パーキンソン病患者に嗅覚の訓練をして認知症に移行するリスクを減らすことを目的にした研究を夏をメドに始める。(順天堂大学順天堂医院は仙台西多賀病院と共同)
 
●服部信孝順天堂大教授(脳神経内科)は「人間は動物と比べて嗅覚に頼らないですむ分、機能が衰えがち。嗅覚を鍛えることで脳機能を改善する方法を探りたい」としています。

■匂いの信号は直接脳へ

 嗅覚の信号は、視覚や聴覚などと異なり、この大脳辺縁系に直接入るのが特徴。嗅細胞が嗅神経につながり、嗅球という組織を経て大脳辺縁系に信号が送られます。
 
 嗅細胞は古くなったものが毎日死んでいき、新しい細胞が生まれ、この嗅細胞に適切な時期に匂い刺激の入力がないと、神経回路に組み込まれず死滅することが分かった。
(東京大学の山岨達也教授らの実験より)
 
 マウスの場合、細胞が生まれて1~2週間の間に匂いの入力を受けないと、細胞が成熟せずに死んでしまったそうです。
適切な時期に嗅覚障害の患者に匂い刺激を与える匂いリハビリテーションの臨床応用につながる可能性が期待されています。
 
http://goo.gl/WRts1G
——原文はココから——–
認知症やパーキンソン病といった脳の病気と、匂いの感覚である嗅覚の関係が注目されている。香りによって認知機能を刺激したり、40~50代から特定のアロマオイルを使ったりすることで病気のリスクを減らす試みが始まっている。認知機能が衰えるリスクのある人たちに嗅覚訓練をして効果を確認する研究も動き出す。

 鳥取県在住の40代半ばの女性Aさん。昼に香りのする「アロマペンダント」を首にかけて過ごしている。ペンダント内のマットにはアロマオイルの一種である「ローズマリー・カンファー」と「レモン」の精油が染み込ませてある。「カンファー」は通常のローズマリーと比べ香りがシャープで神経への作用が強いことが知られている。

アロマオイルをマットに染み込ませ(写真上)、ペンダントで香りを楽しむ(同下)=浦上教授提供
 夜、自宅では別の種類のアロマオイルを使う。鎮静作用があるという「真正ラベンダー」に「スイートオレンジ」を混ぜたものを芳香器に入れて、部屋に香りを満たして眠りにつく。
 「アルツハイマー型認知症の症状が表れるのは多くは65歳以上だが、原因たんぱく質のアミロイドβが脳にたまり始めるのはその20~30年前から。40代からアロマオイルを使うことを勧めている」。日本認知症予防学会理事長を務める浦上克哉鳥取大学医学部教授は説明する。

 この試みの根拠になっているのは、浦上教授らの研究グループが手掛けた香りを使った臨床研究の結果だった。

 介護老人保健施設の入所者にアロマオイルの香りをかいでもらい、その前後で知的機能を測るGBSスコア(老年期痴呆行動評価尺度)という指数を検査した。比較的軽いアルツハイマー型認知症の患者が対象で、4週間のアロマテラピーの後に同スコアの改善を確認した。

 アルツハイマー型認知症では最初に嗅覚機能が低下し、異臭に気づかなくなる人が多い。症状が進むと、脳で記憶を蓄える働きをする海馬が萎縮する。鼻腔(びくう)上部の粘膜にある嗅細胞が減り始め、嗅覚の信号が伝わりにくくなり、その後に海馬の細胞が障害されるというプロセスが確認できるという。

 一方で「嗅細胞は死滅した後にも再生しやすいことが特徴」(浦上教授)。新生した嗅細胞は適切な時期に匂い刺激を受けることで成熟するとされる。「アロマの香りの刺激が海馬などに伝わり、機能が衰えてきた部分の活性化につながる」と説明している。

 症状を直接改善するわけではないが、アルツハイマー型認知症の早期診断に香りを利用する試みも注目されている。東京都健康長寿医療センターでは、嗅覚試験によって認知症かどうかを早期に判断する研究をしている。

 同センターの仙石錬平神経内科医長は「既存の認知機能検査では分からない段階で、嗅覚試験によっていち早く判定できないか検討している」という。より早期の発見ができれば、生活習慣の見直しで進行を遅らせるなどの手が打てる。

 認知症と並ぶ代表的な脳の病気であるパーキンソン病も「匂いが分からなくなる病気」といわれる。「手足が震える」「筋肉がこわばる」といった4つの主要な運動症状が出現する数年前から、嗅覚障害が表れるケースが多いことが最近分かってきた。

 認知症の場合と同じように、嗅覚を担う神経部位に最初に障害が表れるという。また、パーキンソン病の患者は症状が進んだ後に、認知症を発症するリスクが高いことも知られている。

 順天堂大学順天堂医院は仙台西多賀病院(仙台市)と共同で、パーキンソン病患者に嗅覚の訓練をして認知症に移行するリスクを減らすことを目的にした研究を夏をメドに始める。

 パーキンソン病の患者約100人を2グループに分け、一方は通常のアロマテラピーを3カ月続ける。他方のグループでは「納豆のような匂い」など12種類の香りをかぎ分けるなど訓練の要素を取り入れる。試験後に認知機能や脳画像の検査をして効果を比較する。

 服部信孝順天堂大教授(脳神経内科)は「人間は動物と比べて嗅覚に頼らないですむ分、機能が衰えがち。嗅覚を鍛えることで脳機能を改善する方法を探りたい」としている。

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■匂いの信号は直接脳へ

 脳には感情や記憶をコントロールしている大脳辺縁系という領域があり、海馬や扁桃(へんとう)体などが含まれる。嗅覚の信号は、視覚や聴覚などと異なり、この大脳辺縁系に直接入るのが特徴だ。鼻腔上部の粘膜にある嗅細胞が嗅神経につながり、嗅球という組織を経て大脳辺縁系に信号が送られる。
 嗅細胞は古くなったものが毎日死んでいき、新しい細胞が生まれている。この嗅細胞に適切な時期に匂い刺激の入力がないと、神経回路に組み込まれず死滅することが分かってきた。東京大学の山岨(やまそば)達也教授らがマウスでの実験で明らかにしている。

 マウスの場合、細胞が生まれて1~2週間の間に匂いの入力を受けないと、細胞が成熟せずに死んでしまった。山岨教授は「適切な時期に嗅覚障害の患者に匂い刺激を与える匂いリハビリテーションの臨床応用につながる可能性が期待される」としている。

(編集委員 吉川和輝)

[日本経済新聞夕刊2016年6月30日付]
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PS:
写真はヤングリビング社のアロマでイメージです。

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